壺中の天

版権小説(銀高)
09 /17 2017
Twitterの週刊銀高さん(@gntk1w)のお題「お酒」より。

「蟻の夢」シリーズの世界線で書いてます。今の虚との戦いが終わった後の世界です。



壺中のてん(こちゅうのてん)


この頃美味い酒を飲んでねーな

 そんな事を考えながら、大江戸スーパーで買った酒が入った袋を目の前まで掲げた。
戦の後に物資不足だった江戸に段々物が出回るようになってきたが、タイミングがあわないと中々こういう物は手に入り難い。

品質は戦前より落ちるのも仕方ない。今は飲めるだけ有難いってもんだ。



 原チャリに跨って、夜道を走る。目的地はアイツが住む一軒家。


 奴は俺が持っていく土産に不平不満は言わない。満足しなくてもあまり顔に出さない。
こっちが揶揄ったりする時だけ、面白いくらいに顔が変わる。そこだけはずっと変わらない。

 つい口元が綻んでしまったのを引き締める。

 戦で崩壊した街には明かりが少なく、夜空の星は一つ一つ色まで見えるほどハッキリ光っている。
月の無い、少し肌寒い夜。



 明るければ銀鱗に見える瓦屋根の平家が高杉が今住んでいる家。
この家の持ち主はここに女を囲っていた。女は出ていき、空き家になる筈だった家を格安で借りる事ができた。

 原チャリを止めて、家に入る。家の中は外と殆ど変わらない寒さに感じた。
廊下の電気のスイッチを押した。オレンジの光が点る。この光景を見るとおかしな気分になる。昼間とは違う、別世界。


 高杉の寝室の障子を開ける。そんなに遅い時間ではなかったが、奴は布団に横になって眠っている。
肌寒いけれどまだ夏掛けを使っているようだ。

 俺が来ても気付かないことが増えてきた気がする。実は起きていて、気付いてないふりをしているのかもしれない。


 部屋に入り、小さな折り畳みの卓袱台を引っ張ってきて高杉の寝ているすぐ側に出す。その上に酒類を出して置いた。
遠慮なく音を出しているけれど、高杉は起きる気配がない。

 カップ酒の蓋を取り、一口飲む。口の中で刺激を転がして喉に送りこむ。部屋の中に酒の香りが満ちた。

 もう一度酒を口に含むと、眠っている高杉に覆い被さって口移しで酒を流し込んでやる。
高杉の喉が鳴って、飲みきれなかったらしい液体が口の端から零れる。

 高杉の右手が、そっと俺の襟足を撫でる。そのまま髪を逆なでるようにして、掌で後頭部を包む。

 高杉の唇から零れた酒を舐めとり、もう一口分、高杉の口中に酒を流し込む。
喉仏は上下し、唇は喘ぐように半開きになった。

 高杉はずっと伏し目で、こちらを見ない。

 この程度の量の酒では朱は散らないだろうが、障子が廊下のオレンジの光を透し高杉の顔を淡く照らし出している。
薄らと部屋の中もオレンジに染まっている。何かの体内のように、ざわざわと。

 高杉の唇を食んで、舌を吸う。

 高杉も段々とそれに応えるように、舌を自ら動かす。
差し出された肴を味わう。

 高杉が、こちらを見たような気がした。近すぎるとよく見えないけれど、睫毛が当たる感触がする。


 見ている。


 壺中の天。ここは別世界で美酒佳肴が用意されている。


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雪牡丹

版権小説(銀高)
09 /09 2017
ツイッターの週刊銀高(@gntk1w)さんの2017年9月9日のお題「隠居」

隠居というよりは重陽の日に因んでしまいました…。
「蟻の夢・el paradiso」の世界観です。


雪牡丹


「今日は何の日~」

 以前こんな番組をやっていたので、その番組の節で歌いながら高杉が寝起きする座敷の障子を開けた。

「なんだそれ」

思った通り、すかさずツッコミが入る。
高杉は文机に向かっていた。本を読んでいたようだ。真っ青な羽織を肩からかけて、弛緩した姿勢で。

「知らねーの?」

「知らねェな、そんな歌は」

これ、と直売で買った菊を出す。
時々花を飾る事もあるから、男一人で住む田舎の一軒家にも花瓶がある。
白い細身の花瓶に、白い大きな花が一輪。

「じゃあこれは?」

「菊…?」

高杉の渋い顔。パッと見、全然菊に見えない。だが、香りは菊だ。

「重陽か」

「そう、それ」

「ここに来てから菊の節句なんてやった事あったか?」

 虚が起こした戦で、江戸は壊滅状態になった。あれからもう数年たったとは言え、戦の爪痕は深い。
高杉は左腕を失った。

 おまけに記憶もまばらで、覚えている事と覚えていない事がある。

今はそれでいい。

 もしかして覚えていないふりをしているのかもしれない。

それでもいい。


「たまたま目に入っただけだけどな。これ雪牡丹って言うんだってよ、菊なのに、牡丹」

文机の上に、花瓶を置く。
高杉は頬杖をついて、小指で自分の唇の端に触れる。

「へぇ…」

そう呟いて、目を細める。
頬の肉がくくっと持ち上がる。


 知らないふりをしているのかもしれない。


 でも、それがいい。






迎え火

版権小説(銀高)
09 /03 2017
ツイッターの週刊銀高さん(@gntk1w)のお題「迎え火」より。

「蟻の夢」シリーズの数年後位の話です。折角のお題ですが、また生かせませんでした…(涙)。


迎え火




暗い夜道に点々と。 死者を迎える火。


 道なりに火を焚く。この地域の迎え火の習慣はこのようなものだ。火事になるからともうやらない所もあるようだが、ここではずっと続いている。ここでこの時期を迎えるのは何年目だったろうか。


「高杉せんせー、さよーならー」

 すっかり遅くなったため、生徒たちをそれぞれの家へ送り届ける。今日は銀時が大量に持ってきた花火を子供達とやることになったので、いつもよりずっと遅い時間になってしまった。
普段は大人しい子供も大はしゃぎで花火に興じていた。

 隻眼隻腕の身元もよく分らない男の所によく親は通わせる気になったと思う。時代が変わったのか、人が変わったのか。


 塾兼自宅である、古い一軒家に戻ると、

「晋さん、足拭いてください」

 いつもは先生と呼ぶが二人だけの時はこう呼ぶ、生徒の中では年長のおなみが足を洗う盥を持ってきた。上がり框に腰かけて草履を脱ぎ、盥の湯に足を入れる。おなみは子供達が食べた夕飯や西瓜の後片付けをあっという間に終わらせていたようだ。俺が足を洗い手拭いで拭くのを側で見届けて、盥と手拭いをさっと片付けはじめる。

そろそろおなみも家に帰さないと。随分遅くなってしまった。

「麦湯お持ちします」

 いつもの寝室であり居間でもある部屋に出された小さな卓袱台の前に座ると、おなみが麦湯を持ってきた。その手をじっと見つめる。初めて出会ったのはおなみが12歳の頃だったが、大きくなったもんだと思う。ずっと使っている湯呑が小さく見える。
 ついでに湯呑を持った自分の手を見つめる。ササクレが出来ていて、指先も硬い。手に年齢は確実に出ている。

 麦湯を口に運ぶ。何故だか少し視界が明るくなったような気がした。

「あ、帰ってらしたんじゃ?」

 おなみがそう言って立ち上がった。

「帰ってきたってなぁ…」

 そう言うと

「ハイハイ」

 と返された。まるっきり年寄を扱うような口調に聞こえたが気のせいではないだろう。
おなみが軽快な足音を立てて玄関に向かう。奴が帰る場所は他にある。でもおなみはいつも「帰ってきた」という。

 遠くで笑い声が聞こえた。あいつの声と、おなみの声がいやに楽しそうに聞こえる。
おなみが小走りで戻ってきた。

「聞いてくださいよ、あの方バイク飛ばしてきたそうですよ、危ない。おばけと出くわすのが怖いみたいで」

「ちょっ、やめてくんない?  お化けはそういう話してる所に出るって聞いた事ないの?」

 奴が重い足音を立てて入ってきた。顔色が悪い。

「そんなに怖ェなら、この時期暗くなってから来るんじゃねぇ。毎晩グチグチ言いながら…」

 不機嫌が声に出たのが自分でもわかった。怖かったらこんな街から大分離れた明かりの少ない所まで来る事はない。

「…あ、坂田さんはご自分で麦湯を入れてくださいね。あたしは帰りますんで。送っていただかなくて結構ですよ」

 おなみが空気を読んだのか、そそくさとこの場を出ていく。その後姿を、俺と銀時二人で暫し眺める。

 玄関の方の物音が止むと、銀時は卓袱台を挟んで俺の向いに座り、湯呑を手に取ると一気に飲み干した。汗が光る喉が晒されて、喉仏が上下する。

 湯呑を音を立てて卓袱台に置くと、頬杖をつきながら

「いや、別に、出たっていいけども。怖くないけども。」

「…何の話だ」

「アレの話だよ、季節柄のアレの」

「幽霊か」

「やめろって言ってんじゃん。噂をすればなぁ、自分の話してる~って…っていうか、お前の今日の格好真っ白でちょっと…。
もし夜道歩いてたりしたら…」

 今日はたまたま藍白の薄物を着ているだけで、銀時を脅かそう等とは微塵も考えていなかったのだが。

「頭から着物まで真っ白なのはてめェだろうが」

「あっ、そういえば…!」

 と、自分の姿を改めて見て驚く銀時。ふっと、小さくではあるが吹き出してしまった。


 銀時と目が合う。銀時も笑っていた。目が機嫌直したか?と問うているようで面白くはないが、悪くはない気分だ。
 銀時はあまり使っていない座椅子の背に掛けられた赤い、棕櫚の柄の夏物の羽織を取った。

「これ、着ろ」

 こちらに寄越す。

「?」

「迎え火焚くか」




 銀時に促されるまま、羽織を肩に引っかけて外に出た。門の所で暫し待つと、銀時は火を焚く道具一式抱えて出てきた。今時は一式売っているようだが、藁もあるなんて珍しいと思った。

「火種は?」

「まぁ、そこはお盆の作法じゃなくても…」

「迎え火じゃねェのか?」

「……」

 今年はあまり暑くないせいか、夜は少し肌寒い。肩にかけただけの羽織の柄を見つめる。赤地に白で棕櫚の図柄が描かれている。おなみが針仕事も得意で、この家の前の持ち主が置いていった反物でたまに作ってくれる。自分が着ればいいのに、と言うといいからいいからと言う。自分はおなみの着せ替え人形になってやしないかと思う。

 火の匂いがした。煙が多い。藁だけではなく、松も燃やしているのか、ツンとした匂いもする。
ジワジワと火が木の肌を舐めて黒くしていくと、煙は少なくなった。

 銃の形のライターを手に、銀時はしゃがんで火を見つめていた。時折虫が飛んでくるのか、頬を叩いている。

「いいのか、迎えても」

 先祖の霊だろうが知人の霊だろうが、霊にはかわり無いんだぞと言おうかと思ったが、止めた。


「それ以外の意味もあるっていうから」

「ほぅ…どんな?」

「ヴィキで調べて」

「面倒だな…」


 銀時から視線を外し、遠くを見る。昼間だったら田圃が広がっているのが見渡せるが、今は暗闇にポツポツと民家の明かり。

 そして、列を作る迎え火。神や死者を迎えるための道標。

 


 パンパン!と銀時が手を叩いた。柏手?と思ったら、手についた塵やらを払っただけのようで。
よっこらしょと立ち上がって伸びをした。

「本当は火の上飛び越えるみたいだけどな、藁以外も燃やしてるし、いいか」

「…ここでは婚礼の時、そんなのしねェよ」

「もしかして知ってた? うちの地域でもしないわー」

「どっちが飛び越えるんだよ」

「……」

「銀時」

 銀時が、俺の残った方の腕を引く。

 向かい合わせに立つ。銀時の顔を見つめると、無表情。


「迎え火セットが売れ残ってたから。花火のついでに買った」

「へぇ…」

 右腕を掴まれたままだから、銀時の手の熱が伝わってくる。したいと言いたいのがわかる。
ここの所ほぼ毎晩来て毎晩何かしらヤってるから、雰囲気でもうわかる。


 ふと妻問いという言葉を思い出す。結婚の約束をした者同士の夜這いの別名みたいなもんだ。



 
色々と調べたけど、調べた事を中途半端に出しただけで終わってしまった…

小説サイトについて

雑談
08 /30 2017
 実はスマホ持ちじゃないので、自分のサイトがスマホでどう表示されているかちゃんと確認していなかったのですが(wi○さんはスマホ表示確認出来るけど、最近なまけ…むぐ)、Bliskというブラウザ使うとスマホ表示も確認出来るよと聞いて、試しに見てみたんですよ、自分の小説サイトを。

ギャ―――――!!! だった事だけはお知らせしておきます…。スマホで見てあれ?って思った方、もしいらっしゃったらすみません…。

 好きなテンプレートだったのに…。だいたい2008年とか2010年に配布されているテンプレートを使用しているので、スマホ表示対応じゃないというのもあるんでしょうけど、デザインは今時の感じより好きだったりします…。2フレームとかめっちゃ憧れてた…。

 でもデザインが崩れるとかじゃなく、リンクが表示されないというアレなんで、もう…。小説ページ行けないじゃん!!(苦笑) ピクシブの方にも同じ小説置いてるのでスマホ使いの方はそちらをご覧下さい…。そしてパソコンで見れる環境の方はパソコンでお願いします…。

 折角特設ページ設置したのに…。直します…えぇ…。そのうち…。小説はスマホで読めた方がいいですよね。きっと。

 そういえば、セルシスさんの作品発表の場(今は閉鎖)に漫画とか小説上げてた時、複数ページの投稿はモバイル向けかipad向けに指定しなきゃならなくて、なんとなくipad向け指定してたんですが、今考えるとモバイル向けの方が良かったんじゃないかと思うんですよね…。もうとっくに閉鎖したし、遅すぎるんだけど…。

 このブログも、スマホでは背景画像が出てないっぽい?ですね。やっぱり。日常ブログも遠くに住んでる妹に見せたくてやってるんですけど(笑)、私がせっせとバカみたいな背景画像に差し替えたりしても奴は気付いていないんだと思うとね! それだけはもうね、悔しくてね!!


国語準備室

版権小説(銀高)
08 /26 2017
 Twitterの「週刊銀高」さんのお題で、以前【坂田銀八×高杉晋助(3Z)】所謂八高が出た時に書いていたものを今上げます。 書いてたけど、オチまで持っていけなかったんですよね…。

 短いのにいつまでも放置しているのは止めようと思いまして、書き上げました。

 サイトの方も更新しました。→ 「茶腹も一時。」


国語準備室

『国語準備室』

 プレートにはそう書いてあるが、殆ど使われる事がない。今は溢れかえった教材等が所狭しと置いてあるだけ。

 高杉晋助が引き戸を開けると、古紙と煙草の香りと埃の匂いがつんと鼻につく。色々に匂いが混ざって臭い部屋。
それでもここに足を運んでしまうのは、端的に云えば人が来ないからだ。

 そこには、探していた人物がいた。

 いや、探していたというのは正確ではない。たまたま、気が向いてここに来るといつもいるというだけ。


 坂田銀八は、安っぽい折り畳みの机の上に、本やら紙の山に埋もれるように突っ伏していた。
仕事でもしているのかと思って高杉は覗き込んでみる。今週号のジャンプが置いてあった。ジャンプの上には眼鏡と煙草が乗っている。
どうやら仕事してる体を装ってジャンプを読んでいたようだ。

 仕事じゃないのならと、高杉は銀八の向かい側に、これまた安っぽい折り畳みのパイプ椅子を引き摺って置いて、ドカリと座った。
起きない。これだけ物音をたててるのに、銀八は起きる気配もない。

 白いなと思って銀八の頭部を暫し眺める。
ブラインドが半分だけ下りた窓から射す夕日で、ほんのりオレンジがかる。
そう言えば、部屋の中もオレンジに染まっていて何もかも一層古ぼけて見えた。


 眩しい。


 そう思って高杉は目を閉じた。瞼の裏も鮮やかな朱だった。
かつて生きていた世界ではこの眩しさは感じなかった気がした。この世界だからこその眩しさ。

 目を閉じたまま耳を澄ますと、規則正しい寝息が聞こえた。
薄らと目を開けてみると、寝息に合わせて銀八の身体が上下するのが見える。
 いつも着ている白衣はパイプ椅子の背に掛けられており、銀八はワイシャツを腕まくりしていた。
いつもはあまり見えない腕を見つめる。筋と血管が浮いて、動いている。


 生きてるな、当たり前だけど。


 銀八は…銀時よりも、細い気がした。全体的にも少し痩せている。
今の時代にあった背格好なんだろうかと思いながら自分の腕と比べてみると、
自分よりは明らかに太くたくましい。大人と子供も差もあるからなと、自分を納得させる。

 自分の身体も今の時代に適応している。頭の中にある自分の姿と、今の自分の姿が合わない。
苛立ちの原因はそれなんだろうか。


「あのさ、観察しないでくんない」

 
 銀八の手が、眼鏡眼鏡と彷徨う。目当てのものを掴んで、かけた。


 真正面で目が合う。銀八は少し口の端を持ちあげた。


「何か新しい発見でもあったか?」

 
 表情も話し方も、銀時とは少し違う男。明らかに時代に合った生き方をする男。
それが憎らしい反面、唯一変わらない銀時の姿なのかもしれない。

 
 ジャンプの上の煙草を手に取って眺め、一本抜きとって口に咥える。

「火」

 銀八に顔を近づける。


「ここ禁煙なんですけど」

 嘘つけとばかりに、机の端に置いてあるアルミの灰皿を顎で指してみる。


「禁煙はマジなんだって」

 銀八は背凭れに寄りかかって体を揺すって笑う。
同級生はしない、大人の男の表情に見入っていると、銀八もぐぐっとこちらに顔を寄せてきて煙草を奪った。

 
 鼻と鼻があたる。


 次は銀八が顔の角度を少しかえて、軽く唇と唇がふれた。



 顔が近すぎて、銀八の表情なんかよく見えない。
相手もきっとそうなんだろうけど、表情を変えないようにした。そうしないと、全てぶちまけてしまいそうだった。


 唇が少し離れて銀八の吐息が触れる。


「火、いる?」


 銀八の表情は近すぎて見えない。


匣十八

二次創作や創作の小説(メモ)をちょこちょこ書いてます。
時々銀高ぬいぐるみ遊びしてます。